〜親がレールを敷く時代の終わりと、“生きる力”を育てる視点〜
「お受験をしない」という選択に触れて
だいぶ前になりますが、何気なくみていたネットの記事に、とても興味を惹かれるものがありました。その記事のタイトルは「わが子の力を信じるからお受験しない」。
Youtube大学でもおなじみの、オリエンタルラジオの中田敦彦さんのインタビュー記事です。
(もとの記事はこちら)https://woman.nikkei.com/atcl/dual/pwr/081/99
読み進めるうちに、私はとても共感する言葉の数々に出会いました。そこに書かれていたのは、ただの教育論でも理想論でもなく、ひとりの親としての覚悟と信念に満ちた言葉だったのです。
「最初から与えてしまうことのリスクを考えると、自分の力でつかみ取ることを教えたい。わが子の力を信じている」
私は子どもを育てた経験があるわけではありません。けれど、福祉や介護の現場で、そして大人の学び直しやキャリア再設計の支援に携わる中で、「教育」というものが人の人生をどれほど形づくるかを、日々目の当たりにしています。
だからこそ、この記事に感じた共鳴は、単なる共感ではなく、時代そのものに対する“違和感の共鳴”でもありました。
「安定」を信じることは、ほんとうに安心なのか
中田さんが語っていたもう一つの言葉に、私は深くうなずきました。「小学校に入学した子どもの65%は、大学卒業時に今は存在しない職業に就く」──この言葉を読んだとき、私には、以前から持っていたひとつの問いが浮かびました。
「安定を求めることは、ほんとうに“安心”なのだろうか?」
かつての日本社会では、「良い学校に入って、良い会社に就職すれば、安定した人生が手に入る」というストーリーが、ひとつの“成功モデル”として信じられていました。
けれど、いま私たちが生きる社会は、AI、ロボット、政治経済の動きまで、あらゆるものが想像を超えるスピードで変化しています。
もはや「安定」は、永久保証の切符ではありません。むしろ、「安定を信じすぎること」こそがリスクになっているのではないでしょうか。
「沈みゆく船」ではなく、自分で泳ぐ力を
日本経済は長期的な縮小局面に入り、人口減少と高齢化は止まりません。まるで、ゆっくりと下降していく「下りエスカレーター」に乗っているようです。その上で「安定」を信じ続けることは、沈みゆく船の上でデッキチェアの位置を気にしているようなものかもしれません。
けれど、私は絶望しているわけではありません。
沈みゆこうとしている船をなんとか「立て直したい」という力が広がっているのを感じていますし、その一方で、「自分の力で泳いで岸にたどり着く」力を持とうとしている人も増えていると感じているからです。
それが、「生きる力」、すなわち学び、実践し続ける力なのだと思います。
教育とは、「レールを与えること」ではなく、“泳ぎ方”を教えることではないでしょうか。与えられた安心の中で動かない人より、自分で考え、選び、動ける人の方が、これからの社会では確実にしなやかに生きられる。
それは子どもだけでなく、私たち大人にもまったく同じことが言えます。
「学ぶ力」と「活かす力」の違い
「勉強すること」が目的になってしまっている、という教育の危うさも感じます。これは、子どもだけでなく、資格やスキルを追い続ける大人の世界にも共通しています。
私たちはしばしば、“知識を得ること”と“生きる力を得ること”を混同してしまいます。けれど、本当の「学び」は、
点数や資格を得ることではなく、学びを社会に活かす力を育てることです。資格を持っていることがもちろん武器にはなりますが、その資格をどう活用するかの方がはるかに大切。
伝説の野球選手・長嶋茂雄さんが、学生時代「The」を「テヘ」と読んだ、という逸話があります。それが真実かどうかはさておき、彼の偉大さはそこではありません。彼は“野球”という舞台で、自分の力を極限まで発揮し、多くの人に夢と希望を与えました。
つまり、学力だけではなく、どんな舞台で自分の力を輝かせることができるかこそが、「生きる力」のひとつの形なのです。
“選ばせる”のではなく、“選べる”人を育てる
教育とは、子どもに“何を選ばせるか”ではなく、“自分で選べる力”を育てることだと思います。中田さんの言葉の中に、こんな一節がありました。
「子ども自身が学歴を見て『こういう大人にはなりたくない』と思うなら、それも能動的な選択。その場合は“学力が低い”かもしれないけれど、きっと違う能力が備わっている。その力で社会的責任を果たしてくれればいい」
この「相手を信じる」という覚悟。それは、子どもに限らず、人を育てるすべての立場に共通することだと思います。
“信じる”とは、相手を支配しないこと。“任せる”とは、失敗する可能性をも受け入れること。本当に人を信じるとは、その人の中にまだ芽吹いていない可能性を信じることだと思います。
親が、上司が、先生が、子どもの未来を“設計”してしまう時代は終わりました。これからの時代に必要なのは、“自ら学び、自ら選び、自ら動く力”です。
大人こそ、学び直す時代を生きる
このテーマは、子どもの教育だけではなく、私たち大人の生き方そのものに深く関わっています。たとえば、「安定した仕事についていれば大丈夫」「大きな会社に勤めていれば将来は安心」
そんな常識を持って生きてきた私たちは、社会の変化のスピードに戸惑い、時に立ち止まり、“学び直し”を迫られる時代に生きています。
しかし、これは決して悪いことではありません。むしろ今こそ、「自分の人生を再設計できる力」を取り戻すチャンスです。子どもに「勉強しよう」と伝えるなら、まずは私たち自身が、“学び続ける背中”を見せることから始める必要があるのではないでしょうか。
学び=自分を再構築すること
「学び」とは、単なる知識の獲得ではなく、自己再構築のプロセスです。これまでの価値観を問い直し、新しい視点を取り入れ、変化の中で柔軟に自分をアップデートしていく。だから、どんなに年齢を重ねても、どんな環境にいても、「学び直す力」は失われません。
そしてそれは、誰かに“与えられる”ものではなく、自分で“取り戻す”ものです。社会がどれほど不安定になろうと、
「泳ぐ力」を持つ人は大丈夫です。
あなたは、何を「安定」と呼びますか?
ここまで読んでくださったあなたに、ひとつ問いを投げかけたいと思います。
あなたにとって「安定」とは、どんな状態でしょうか?
そして、それは本当に“安心”につながっていますか?
安定を手放す勇気は、不安定を恐れない心から生まれます。子どもの未来を信じるとは、「変化を恐れず、自分の人生を信じる」ことでもあります。
もし今、あなたの中に“揺らぎ”があるのなら、それはきっと、あなたが次のステージへ進もうとしているサインです。
子どもたちの未来のために。そして、自分自身のこれからの人生のために。
「自分の力でつかみ取る」という視点を、育てていきませんか?
「学び直す力」は、“読む力”から始まる
どんなに良い本に出会っても、読み切れなければ「知っている」で終わってしまいます。でも、もしあなたがもっと速く・楽に読めるようになったらどうでしょうか?それは、新しい学びの扉を開く“最初の一歩”になるはずです。
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目の動かし方ひとつで、集中力も理解力も変わります。「読むこと」から、あなたの“学び直し”を始めてみませんか?
よくあるご質問(FAQ)
A:社会や産業の変化が速く、「いまの安定」が将来の不安定に転じる可能性が高いためです。固定化よりも、学び直しや自己更新の力が長期的な安心につながります。
A:与えられたレールに従う力ではなく、自分で問い、選び、試し、学びを社会に活かす力です。失敗から学ぶ姿勢や自律的な意思決定が核になります。
A:「何が正解か」を与える前に、問いを投げかけ、選択を任せ、小さな実験を応援すること。自分自身も学び直しを実践し、その背中を見せることです。
A:学歴は一要素に過ぎません。重要なのは、知識を行動に変え、周囲へ良い影響を与える力(活かす力)です。多様な強みが社会価値を生みます。
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