100点の仕事と101点の仕事の違い
私たちは日々の仕事で「100点」を目指すことを当然のこととしてきました。たとえば営業であれば、約束通りに契約をまとめること。介護職であれば、利用者に計画通りのケアを提供すること。教師であれば、授業を時間通りに進め、カリキュラムをきちんと終えること。これらはすべて「100点の仕事」です。
しかし、よく考えてみると100点は「やって当たり前」の水準でもあります。プロとして仕事を任されている以上、80点や90点では不十分。100点は合格ラインであり、そこに安住してしまえば成長は止まります。
一方で「101点の仕事」とは、100点を取った上でさらに「相手の期待を超える一手間」を加えることです。たった1点の違いですが、その1点が相手の心に残り、信頼を育み、新しいチャンスを引き寄せるのです。
私はこの「101点の仕事」という考え方を、訪問介護事業の現場や、教育コンテンツを提供する仕事を通じて何度も実感してきました。
手書きのハガキが生んだ信頼
私が訪問介護事業所でサービス提供責任者に就いたときのことです。新しく担当を任された私は、まず地域のケアマネジャー45人に挨拶回りをしました。これは恐らく、どんな人でも着任時に行う「100点の仕事」でしょう。
ところが私は、その後ひとつ工夫をしました。対応してくださったケアマネ全員に「手書きのハガキ」を送ったのです。内容は簡単でした。「先日はお忙しい中、時間を割いていただきありがとうございました」という感謝の気持ちを丁寧に書き添えただけ。それでも、手書きで綴られた文字には温かみがあり、相手に「特別扱いされている」という感覚を与えます。
結果はすぐに表れました。数日後、2件の依頼が舞い込んできたのです。さらに私は、訪問介護に対する自分の思いや、これまでの施設での利用者とのエピソードをA4用紙にまとめ、プリントアウトした手紙を再度送りました。そこには「なぜこの仕事を大切にしているのか」「どんな利用者の笑顔に支えられてきたのか」を書きました。すると、また新しい依頼がやってきたのです。
さらに印象的な出来事がありました。ある利用者が「昔のように歌を歌いたい」と話していたことを、私はケアマネに細かく報告しました。その情報をきっかけにデイサービスでの活動につながり、利用者もケアマネも大いに喜んでくれました。そのケアマネからは別の案件の依頼までいただくことになったのです。
これらはすべて「100点の仕事」に「プラス1点」を加えた結果でした。単なる制度的なやり取りや契約だけでは生まれなかった信頼が、ほんの小さな一手間で広がっていったのです。
なぜ「プラス1点」が必要なのか
では、なぜ「101点の仕事」がここまで大きな成果につながるのでしょうか。
- 信頼が生まれる
人は「予想以上の対応」に心を動かされます。期待通りにしてもらうのは当然と感じますが、想定を超える気遣いがあったときに、強い信頼が芽生えるのです。 - 差別化になる
同じ職種で働く人は数多くいます。その中で「あと1点」の積み重ねをする人は多くありません。だからこそ「この人にお願いしたい」という選ばれる理由になるのです。 - 自分自身が成長する
100点に安住すると、仕事はルーティンになり、学びが止まります。101点を常に意識することで「どうすれば相手に喜んでもらえるか」と考える習慣が身につき、自然と成長していけるのです。
101点を目指すための3つの実践ステップ
「誰にどんな価値を届けるのか」を理解することが第一歩です。介護であれば利用者の生活背景や趣味。営業であれば顧客の業界動向や困りごと。相手の状況を知るほど、喜ばれるプラス1点を思いつく可能性が高まります。
特別なことをする必要はありません。会話の最後に「お気をつけて」と声をかける。レポートに簡単な要約を添える。打ち合わせの後に「今日はありがとうございました」と一言メッセージを送る。これらはどれも1分足らずでできることですが、相手に残る印象は大きなものです。
100点を達成すると安心感があります。しかし、そこにとどまれば進化はありません。仕事を終えたとき、「ここにもう1点加えるとしたら何だろう」と問いかける習慣を持つこと。それだけで常に成長し続けられます。
他業種にも通じる「101点の視点」
この考え方は介護の現場に限りません。
- 営業職:契約をまとめた後に一通の手書きメッセージを送るだけで、次回の商談につながる。
- 事務職:単なる数字の報告だけでなく、グラフや補足説明を添えれば、上司や同僚が一目で理解しやすくなる。
- 教育やコーチング:知識を伝えるだけでなく「明日から何をすればよいか」という行動につながる問いを加えれば、学びの定着率が高まる。
このように、どんな職業でも「101点の視点」を取り入れることは可能です。
成長と負荷のバランス
もちろん、101点を目指すことは負荷がかかります。「そこまでやらなくてもいいのでは?」と感じることもあるでしょう。けれども、負荷のないところに成長はありません。筋トレで筋肉が成長するのは、負荷を与えた後の回復によってです。同じように、仕事においても負荷があるからこそ成長できるのです。
そして覚えておいてほしいのは、いきなり110点や120点を目指さなくてもいいということです。必要なのは、ほんの1点。相手の期待を少しだけ超える工夫です。その1点を積み重ねることが、やがて大きな差を生むのです。
まとめ:明日のあなたの101点は何ですか?
100点は当たり前。101点こそが信頼を生み、未来を切り開きます。「プラス1点」は決して大げさなことではありません。感謝を言葉にする、気づいた情報を共有する、少しの時間を割いて手間をかける。それだけで相手の心に残り、次のチャンスにつながります。
明日の仕事で、あなたはどんな「1点」を付け加えますか?
読書にも「101点の工夫」を取り入れてみませんか?
仕事で成果を出すために「あと1点」の工夫が大切なように、読書にも同じことが言えます。ただ読むだけで終わるのか、それとも「速く・楽に・理解しながら」読む力を身につけるのか。その差は、まさに“101点”の違いです。今回ご用意した無料動画コンテンツでは、
- 文字をかたまりで捉える
- 視野を広くしてかたまりを大きくする
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という3つのポイントを、実演を交えながらわかりやすく解説しています。さらに、すぐ実践できる「3つのポイント実践ワーク」もプレゼント。読書を次のステージに進める“プラス1点”を、今すぐ体験してください。
よくあるご質問(FAQ)
A:プロとして“当たり前”の100点を満たしたうえで、相手の期待を少しだけ超える「プラス1点」を積み重ねる働き方です。小さな一手間が信頼や次のチャンスを生み、長期的な差別化につながります。
A:挨拶後の手書きメッセージ、要点の一行サマリーを添えた報告、会議メモに次アクションを明記、利用者の小さな声をケアマネへ共有、納品後のフォロー連絡など。どれも数分でできる“期待超え”です。
A:「終わったら+1のチェック」をルール化し、テンプレート(お礼文・要約フォーマット・次アクション雛形)を用意。所要時間を3分以内に制限し、毎日1回だけでも“+1”を実行することで定着します。
A:はい。営業・事務・開発・バックオフィスなど全ての職種で有効です。相手(顧客・上司・同僚)が「助かった」と感じる1点を設計すれば、選ばれる理由が増え、内外の評価が安定して積み上がります。
A:まずは“100点の再現性”を作りましょう。標準手順(SOP)とチェックリストでミスを減らし、基本品質を安定化。そのうえで、最小コストの+1(要点サマリー、1通のフォローなど)から始めるのが近道です。
