読書を“知識の収集”から“未来をつくる技術”へと変える
本を読んでいるはずなのに、「何も変わっていない気がする」。そんな感覚を覚えたことはないでしょうか。
積ん読は増えていくのに、仕事や人生の行動が変わらない。本の内容は「いい話だった」で終わってしまい、翌日には思考も習慣も元通り。読書量の割に成長実感が薄く、どこかモヤモヤが残る。
実はこの状態には理由があります。それは「読み方」以前に、“読む順番” が間違っている可能性があるのです。
読書の効果は、情報量で決まるわけではありません。もっと言えば、速さでも質でもなく、「どの分野の本をどう積み上げるか」によって決定的に差がつきます。
この記事では、その土台になる「同心円的読書術」というフレームを使って、読書を“知識の収集”から“未来をつくる技術”へと変える方法を解説します。
読書の効果が出ない本当の理由
まず最初にお伝えしたいのは、読書には「積み重なる読み方」と「積み重ならない読み方」があるということです。積み重ならない読み方の典型は、次のような状態です。
- SNSで話題になった本だけ読む
- ノウハウ本、ビジネス書ばかり読み続ける
- 気分でジャンルがバラバラ
- 自分が理解しやすい分野に偏る
- 読んだその場で「勉強になった」で終わる
この状態では、本を読んでも知識が断片化し、人生の“土台”に結びつきません。頭には入るけれど、価値観や行動に反映されない。そして「変われない」という自己否定が始まってしまう。
けれど、それは努力不足でも才能でもありません。ただ単に、読書の順番と土台づくりができていないだけです。
変化の激しい時代だからこそ必要な「読書の設計」
今、私たちの生きる世界はものすごいスピードで変化しています。
- 仕事の常識が突然入れ替わる
- AIやテクノロジーが急速に進化する
- 社会の価値観そのものが揺れ動く
- かつての“正解”がすぐに古くなる
こんな時代に必要なのは、“知識の多さ”ではありません。必要なのは、課題を発見し、自ら学び、行動に変える力です。
その力を育てるのが読書なのですが、実は「どの分野から学ぶか」「どの順番で読んでいくか」を間違えると、行動につながらないばかりか、かえって混乱を招くこともあります。
そこで役立つのが、今回お伝えする 「同心円的読書術」 なのです。
「同心円的読書術」とは何か?
価値観 → 専門性 → スキル → 教養 の順で広げる読書法
同心円的読書術とは、本のジャンルを「円の層」として捉え、内側(価値観)から外側(教養)へと順番に広げていく方法です。この構造が非常に合理的で、どのジャンルがどんな役割を果たし、何が不足しているのかを明確にできます。
では、それぞれの層を詳しく見ていきましょう。
【第一円:核】人生の軸をつくる読書(自己啓発/哲学/スピリチュアル/自伝/小説等)
最初に読むべきは、自分の価値観を育てる本です。
- 自己啓発
- 哲学・倫理
- スピリチュアル
- スポーツ選手、経営者、芸能人などの自伝
- 感情が動く小説
などが挙げられます。ここで大切なのは「自分の心が動く本」と出会うこと。
たとえば
・誰かの言葉が胸に刺さる
・自分の生き方を問い直したくなる
・涙が出る
・価値観が揺さぶられる
この層は「人生の核」をつくる読書です。価値観の土台が形成されると、その後に読む全ジャンルが“自分の軸”に沿って積み重なっていきます。
【第二円:中核】専門性を深める読書(専門書/実践書/研究・業界書/資格試験勉強等)
価値観の核ができたら、次は 専門性の強化です。たとえば私の場合でいえば、
- 学び、読書術、勉強法
- 介護・福祉
などが挙げられます。Web上の記事から学術論文まで、この積み重ねによって、初めて説得力、専門性、独自性 が育ちます。資格試験の勉強も、もちろんこの円に入ります。
また、専門性は“掛け合わせ”という考えを持つとさらに力が増します。例えば「弁護士」✕「税理士」で「税法専門の弁護士」というような、隣接・関連する分野のこともあれば、私のように「介護・福祉」✕「学び」というような、一見違う分野での掛け合わせもあります。
いずれにしても、「他の誰でもない“自分の言葉”で語れる領域」をつくるのが、この“第二円”の目的です。
【第三円:外円】仕事で成果を出すための読書(ビジネススキル・ノウハウ本)
専門性が高くても、社会で成果を出すにはスキルが必要です。どんなに専門能力が高くても、それを発揮する力がないばかりに損をしている、という方も多いと思います。
ここで読むのは、いわゆるビジネス書。
- コミュニケーション
- 習慣化
- マネジメント
- リーダーシップ
- 目標設定
- 論理思考
- プレゼンテーション
- マーケティング
- 仕事術
などですね。この層の目的は、自分の専門性を“社会で価値として発揮する”ことです。
ただし注意点があります。この層だけを読み続けると、「ノウハウコレクター」になります。行動が伴わず、“知識だけは豊富な人”になってしまう。だからこそ順番が大事なのです。
ノウハウ書は、読むと「勉強した感覚」を簡単に得ることができますし、自分が「仕事ができるようになった」という勘違いを冒しやすい。
だからこそ、この層の本は、内容を理解することよりも、実践することが大事になります。
【第四円:最外円】世界を広げる教養読書(歴史/社会学/政治/経済/科学/文化等)
最も外側の円は、視野を広げるための教養読書です。これらの分野は、直接仕事にはつながらないように見えます。
けれど長期的にみると、判断の質が大幅に変わります。
- 歴史を知ればニュースの理解が変わる
- 科学リテラシーがあれば情報に振り回されなくなる
- 文化・宗教を知れば人の行動が見通せる
この層は“思考の深さ・広さ”を決める基盤になります。また、ここ数年「リベラルアーツ」の重要性が問われていたり、ビジネスの世界でも「デザイン思考」が大切だと言われるようになっていたりと、この層の深さ・広さが仕事の成果にも大きく影響してきます。
行動につながる読書へ― 今日からできる3ステップ
ここまで読んで「やってみようかな」と感じたなら、ぜひこの3つだけ試してみてください。どれも5分以内にできる小さなステップですが、読書の質と自己理解が驚くほど変わります。
まずは、読書の“現在地”を確認するところからです。方法はとてもシンプルで、次の4つのジャンルに仕分けるだけ。
- 核(自分の価値観が育つ本)
- 中核(専門性を深める本)
- 外円(スキルを身につける本)
- 最外円(教養を広げる本)
本棚を前にしなくても大丈夫です。いま読んでいる本、積ん読、最近買った本を思い浮かべながら、「これはどの円だろう?」と感覚的に分類してみてください。仕分けてみると、想像以上に偏りが明確に見えてきます。
・専門書ばかり
・ビジネス書ばかり
・自己啓発だけ
・教養本が圧倒的に少ない
こうした“読書の癖”を把握するだけで、次に読むべき1冊がはっきりしてきます。
分類が終わったら、“円の厚み”を見ていきます。どのジャンルの冊数(または最近読んだ頻度)が少ないかをチェックしてみてください。
ここで大事なのは、「偏っていてもいい」ということ。むしろ偏りがあるからこそ、伸びしろが見えます。
・価値観の核が弱い → 自分軸が揺れやすい
・専門性が薄い → 発信や仕事で自信が持てない
・スキル本ばかり → ノウハウは増えるのに行動が続かない
・教養が少ない → 判断の土台が弱くなる
どの円が薄いかに気づくだけで、読書が“目的に沿った行動”に変わります。
ここからがもっとも重要なポイントです。4つの円のうち、最も薄いジャンルを補強するために、たった1冊だけ本を選んでください。選ぶときの基準は難しくありません。
- 興味がある
- 今の自分に必要だと思う
- 読みやすそう
- 今の課題に関係していそう
このどれか1つを満たしていれば十分です。重要なのは、“バランスを意識して選ぶ”という行為そのもの です。
たとえば、
- 「最近ビジネス書しか読んでなかったな」→ 自己啓発や哲学の本を1冊選ぶ
- 「専門書ばかりで、視野が狭い気がする」→ 世界史や科学の本を1冊読んでみる
- 「価値観の軸が揺れている時期だな」→ 自伝や心に響く小説を読む
こうした“少しの調整”が、数ヶ月後の思考・行動・判断に大きく影響します。
同心円的読書術は、“たくさん読むための方法”ではありません。限られた時間でも、読書が人生の土台に積み上がるようにするための方法です。
今日の5分の分類と1冊の選択が、半年後の成長やキャリアの方向性を静かに変えていきます。
偏りを防ぐためのチェック方法― ケース比較で視覚的に理解する
同心円的読書術を使うメリットのひとつは、自分の読書の偏りがすぐにわかることです。以下は典型的な例です。
悪い例(偏っている読書)
- 専門書ばかり → 狭く深いが、応用が効かない。(いわゆる“専門バカ”状態)
- ノウハウ本ばかり → 手段ばかり増えるけど成果が出ない。(ノウハウコレクター)
- 教養本ばかり → 知識はあるが行動できない。(ただの“雑学王”)
- 自己啓発だけ → モチベーションは上がるけど続かない(自己啓発オタク。自己啓発詐欺やスピリチュアル詐欺に要注意!)
良い例(バランス型読書)
- 核:確固とした自分の軸、価値観を持っている
- 中核:高い専門性を身に付けている
- 外円:効果的に発揮し社会に価値を提供できる
- 最外円:視野が広がり、深みのある人間性を得る
こうやってバランスを取りながら読むことで、読書が人生そのものに浸透していきます。
読書は単に情報を増やす作業ではありません。そして、積んだ本の冊数を競うものでもありません。読書は本来、価値観を整え、専門性を磨き、行動を変え、未来をつくる技術です。
それを実現するために必要なのが、今回お伝えした「同心円的読書術」です。あなたの読書は、必ず人生を動かす力になります。
読書が“行動”に変わる~その鍵は読み方にあります
読書の効果を高めるには、ただ知識を増やすのではなく、“自分の人生に活かせる形で読むこと”が大切です。同心円的読書術はそのための「読む順番」を整える方法でした。
しかし、もうひとつ多くの人が見落としている重要な要素があります。それが、「理解しながら速く読む技術」 です。
ゆっくり丁寧に読むだけでは、読書が習慣として続かなかったり、量がこなせず行動に結びつかなかったりします。逆に、速く読むだけでは理解が浅くなり、身になりません。その“ちょうどいいバランス”をつくるのが、「やさしい速読&超実践的・戦略的読書術」 です。
文字をかたまりで捉え、視線のムダを減らし、理解を落とさずスピードを上げる。さらに、目的別に読み方を変える戦略的読書で、読んだ内容が実践につながる流れを作ります。
読書の順番が整った今だからこそ、読み方も整えると、効果は最大化します。「もっと読めるようになりたい」「読書を生活の中心にしたい」そう感じたタイミングで、こちらをご覧ください。
よくあるご質問(FAQ)
A:「同心円的読書術」とは、読書ジャンルを4つの円(核/中核/外円/最外円)として捉え、内側から外側へと順番に広げながら読むことで、価値観・専門性・スキル・教養をバランスよく育てる読書法です。単に読書量を増やすのではなく、「何をどの順番で読むか」を設計することに重点を置きます。
A:読書の順番がバラバラだと、知識が断片化しやすく、行動や人生の変化につながりにくくなります。まず「核」で価値観の土台をつくり、「中核」で専門性を深め、「外円」で仕事のスキルを整え、「最外円」で教養を広げる順番に読むことで、読書の効果が積み上がりやすくなります。
A:この記事では、今読んでいる本や積ん読のリストを、4つの円(核/中核/外円/最外円)に分類する方法を紹介しています。ジャンル別に仕分けしてみると、「専門書ばかり」「ノウハウ本ばかり」などの偏りが一目でわかり、どの層を意識して補うべきか判断しやすくなります。
A:はい、役立ちます。読書時間が限られている人ほど、「量より順番」が重要になります。同心円的読書術では、今の自分にとって優先度の高い円から本を選ぶため、少ない時間でも効果的に読書できるようになります。
A:最初の一歩は「今持っている本を4つの円に分類すること」です。そのうえで、最も薄い円(あまり読めていないジャンル)を見つけ、そこから1冊だけ読む本を選んでみてください。この小さなステップを踏むだけでも、読書の質と人生への影響が少しずつ変わり始めます。
